XRが極度に発達した世界を妄想する


XRというのは、さすがにまだ一般に浸透した言葉とは言いがたいが、


「 IT業界では、いろいろなアルファベットを総称してXで書くことが多くて、ここではAR とVRとMRの総称。ARは Augmented Reality(拡張現実)で、要するにポケモンGOみたいなやつ、VRはVirtual Reality(仮想現実)で、知ってるでしょ、ゴーグルみたいのをかぶるやつ、MRはMixed Reality(混合現実)なんだけど知らなくていいよ、要するにそれらを合わせたようなやつ 笑 」


という説明で、だいたい通じるだろう。


さて、この世界がさすがに大きく動き出した感がある。僕は、ここが大きな潮流になるには、やはりスマホでは物足りなくて、気軽にかけられるメガネ型デバイス(もしくはコンタクトレンズ型だけど、これはもうしばらく先だ)が鍵だと思っていたが、技術的に実用の可能性が見えてきた気がする。米国のMagic Leapと中国のnrealだ。Magic Leapは数年前から巨額の資金調達と、徹底した製品の秘密主義で噂だけが先方していたものの、製品が見えてきたと思ったらあっという間にNTTドコモと提携したしnrealはその軽量性や視野の広さがすごいという噂が広がり始めたのとKDDIとのパートナーシップ締結がほぼ同時だ。(ついでに、nrealの創業者は元Magic Leapの技術者なので -2014年9月から2015年1月 がNVIDIA所属、2015年7月から2016年8月がMagic Leap所属で、2017年1月にnreal創業-、Magic Leapがnreal CEOを技術盗用で告訴するというニュースまでついてきた。)


それで、肝心のユーザ側だが、これはもうポケモンGOが圧倒的なパワーを持っていたので、「普通のサングラスみたいなのをかけるだけで、ポケモンがその辺にいるみたいに見えるんだよ」で、すごさが伝わりそうだ。そこにきて、ハリーポッター:魔法同盟が出て、研究者仲間ではIDを教え合ってフレンドになるのが流行ってるし 笑、もうまもなく Minecraft Earthが出るし、となれば、だいたいの下支えはできた気がする。


ついでに言えば、アプリケーションを開発する立場としても、最近はOculusで簡単にVR空間を表示してみるとかAndroid対応スマホでARを試してみるとか、簡単なものであれば、Unityを使うとあっという間にできてしまう。


Minecraft Earth トレーラー


とは言っても、実際に本当にスマートグラスをかけて歩く人が出てくるようになるには、技術的な問題やら、ファッション性の問題やら、Google Glassなども苦労したプライバシーの問題やら、あまりにも問題が多いので、僕はまだ10年は先だろうと思っているのだが(研究者仲間でもある神戸大の塚本先生とかは特別です 笑)、本当にそうなったときにはどんなことになるのか、妄想しているだけでも楽しい(微妙に怖いが)。


日常生活の中で、別に物体として存在しなくても情報としてだけ手に入ればいいものは、サイバー空間でメガネを通してみることになるのかな?


たとえば、調味料は必要だけれど、そのケースに書かれている商品名やら成分名やらの文字は全部サイバー空間で見ればいいじゃんとか、


あれ? テレビってメガネの中でだけ見えれば良いからいらないな。今でもOculus GoでNetflix 見れるから、その延長線かなとか、


待てよ、お金っていらないじゃん、ああ、まあどうせキャッシュレス化が進んでるからその頃には使われてないかとか、


いやいや、それどころか、もうそこまでくれば、リアル空間と並行してサイバー空間が存在するのと同じことなのだから、ミラーワールド(←Wiredの特集は面白かった)だよ。だけど、たとえば、自分の家がいるこの場所を、ミラーワールドの中では別の人が保有しているとかなったら気持ち悪いし、サイバー空間の中で場所を取得するにはリアル空間も保有していなければいけないとかの法律とか出てくるかも、とか。


ただやっぱり、メガネをかけた時に、あまりにもサイバー空間とリアル空間が融合して見えてくると、人間の側も、目の前にあるものがどちらなのかわからなくなることは増えるはずで、それはさすがに危険なんじゃないかな。そこを明確に区別する方法は、何か新たに見つかるだろうか? 「道路を歩くときはメガネのAR機能をオフにしましょう」とかなるのかな、、、

T. Kamba (神場知成)

人間・機械融合系コミュニケーションシステムのデザインに興味を持つ。コンピュータ・サイエンス分野で、メーカー系研究所の研究員を経て、現在は東洋大学 情報連携学部 教授。専門はユーザ・エクスペリエンス・デザインなど。 趣味は音楽全般。特に自分でも演奏するピアノを中心にジャズ、クラシック。ジャズはミシェル・ペトルチアーニ、ビル・エヴァンス等。クラシックはバッハ、フィリップ・グラス、ブラームス、グレン・グールドなど。

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