今更ながらアラン・ケイとDynabook

「未来を予測する最善の方法はそれを発明することだ」という言葉で一番知られている感もあるアラン・ケイ。別に過去の人ではなく、今も健在だ(2017年5月)。下記は、とりあえず最近の映像らしきものをYouTubeから拾ってみた(ARについて語っている)。

 

 

アラン・ケイについては「パーソナルコンピュータ」という考え方そのものを発明し、Xerox Altoという形でその世界最初の実現をリードした、というところまでは知っていたものの(もちろん、その他も多数の功績がある)、恥ずかしながら肝心の原論文をちゃんと読んだことがなかった。今回ちゃんと読んで、あらためて得るところは大きかった。
読んだのは、1972年に発表された論文「あらゆる年令の子供のためのパーソナルコンピュータ」
Alan C. Kay: A Personal Computer for Children of All Ages

および、その5年後に、実現状況の中間報告という形で発表されている「パーソナル・ダイナミック・メディア」

Alan Kay and Adele Goldberg: Personal Dynamic Media

である。前者はネットで日本語訳も簡単に見つかる。
一般に

「まだ、『個人個人が自分専用のコンピュータを持つ未来がくる』という考え方がなかった時代にそれを提示したところがすごい」

という言い方がされることが多いが、その言い方だけではSFと変わらない。

思ったのは、

  • PCの概念に加えて、その技術的なスペックに対する見通しの理想と現実のバランスがすばらしい。
  • 「子どもの教育やクリエイティビティへの貢献」という熱意が強く感じられ、それに対する教育心理学的な考察にも裏づけられている。
  • そして、当然ながら、それを短期間で実現させたリーダーシップも素晴らしい

また、

  • 「今のタブレット(iPadなど)は、ほとんどアラン・ケイの構想 Dynabookそのもの」と言われることも多いが、今のタブレットでは、もっとも重要な部分が抜けていると思う。それは「そのデバイス上で、子供が簡単にプログラムできて、それこそが子どもの創造性をはぐくむこと」だ。そういう意味では、今のタブレットがまだアラン・ケイの構想に追いついていない、というのが正しいと思う。でも、明らかに時代はそちらに向かっている。

ついでに下記が面白そうなので、中古品しかないようだがamazonで注文してみた。読むのが楽しみだ。

アラン・ケイ (Ascii books) 単行本 – 1992/4

T. Kamba (神場知成)

人間・機械融合系コミュニケーションシステムのデザインに興味を持つ。コンピュータ・サイエンス分野で、メーカー系研究所の研究員を経て、現在は東洋大学 情報連携学部 教授。専門はユーザ・エクスペリエンス・デザインなど。 趣味は音楽全般。特に自分でも演奏するピアノを中心にジャズ、クラシック。ジャズはミシェル・ペトルチアーニ、ビル・エヴァンス等。クラシックはバッハ、フィリップ・グラス、ブラームス、グレン・グールドなど。

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