心地よさについて(1)

「心地よさ」というのは人間の生活において重要なものだが、なかなか理論だてて説明するのはむずかしい。「そんなもの理論だてて説明しなくても良いだろう」と思うかも知れないが、それを作りだす側から見れば、なにかしら体系的に考える手がかりがほしい。「作りだす側」というのは、たとえば、製品開発やサービス提供をする側だ。スマホが「うまく説明できないけどなんとなく操作したときに心地よい」ことは、売れ行きに影響するだろう。と言うか、製品開発などでは、そういうことの重要性が、最近はどんどん大きくなっているのだ。

やや限定された話になってくるが、たとえば、画面の上に1つ長方形が表示されていて、「心地よい左右の往復運動をデザインせよ」と言われたら、どんなことを思い浮かべるだろうか?(筆者が関わるコンピュータサイエンス分野での授業ならば、「プログラムせよ」である)

すぐに思い浮かぶのは、直線的な往復運動であっても、等速ではなく、何かしら速度を変化させることだろう。

「『ゆっくり動き出して速くなり、またゆっくりになる』という動作を繰り返す」

などが思いつきやすいところだ。自分のなかでイメージができたら、たとえば下にリンクしたページを見てみると良い。ページの左上に8つの動きと、そのときの速度変化のグラフがある。どれが心地よいかは人によって異なるだろうが、もしも人気投票をやったら、結果はある程度偏るような気がする。

さまざまな往復運動

ところでこのような動きに関しては、たとえば、次の本が面白い。

「ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法」

1万円以上の、かなり厚く大型の本なので、気軽に読むわけにはいかないが、たとえばそこに書いてある「12の基本原則」というところには、ディズニーアニメがどのようなテクニックを使って、モノ(人間であれ動物であれ、物体であれ)を生き生きと見せるかが整理されている。だいたいの概要を知りたければ、たとえば下記の動画を見るのがお薦めだ。

12 principles of Animation (YouTube)

ところで最近は筆者は、音楽の分野での心地よさにも興味があり、協和感ということを考えたりしている。ちょっと面白い論文も見つけた(下記リンクは pdf)。これらについては、今度また書いてみたい。

山本由紀子他:協和感研究の動向と課題 -聴覚的協感を中心として-

T. Kamba (神場知成)

人間・機械融合系コミュニケーションシステムのデザインに興味を持つ。コンピュータ・サイエンス分野で、メーカー系研究所の研究員を経て、現在は東洋大学 情報連携学部 教授。専門はユーザ・エクスペリエンス・デザインなど。 趣味は音楽全般。特に自分でも演奏するピアノを中心にジャズ、クラシック。ジャズはミシェル・ペトルチアーニ、ビル・エヴァンス等。クラシックはバッハ、フィリップ・グラス、ブラームス、グレン・グールドなど。

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