間(ま)の取り方

誰かに口頭で話しかけたにせよLINEでメッセージを送ったにせよ、返事をするまでの「間(ま)」というのは、結構、会話の印象に影響することがある。口頭にせよLINEにせよ、遅い場合はそれぞれ、考えないと答えられないとか答えにくいとか、あるいはそもそもLINEなどの非同期コミュニケーションであれば、すぐに答える必要もないので、ここではさておくとして、逆に「早すぎる」のも、それなりに違和感があるものだ。話を客観的にするために、たとえば演劇であれば、親が子供に「宿題やった?」と言い終わらないくらいのタイミングで「やったよ」と答えれば、たぶん、子供が親をうるさく思っているという表現だろう。

ところで、これは相手が人間の場合の話をしているわけだが、もしも相手がコンピュータだったらどうだろう。

なんでこんなことを思ったかと言うと、LINEに自動応答する仮想キャラクター、いわゆるチャットボットをいくつか試していたら、その返事のあまりの速さに少し違和感を感じたからである(ここでは、ほんの0.5秒程度、早いか遅いかという、ごく短時間の話をしている)。たとえばマイクロソフト社の「りんな」と会話をしてみると、こちらが打つと同時に「既読」になり、それとほぼ同時に返事が来る。まあ女子高生キャラの設定なのでこれが自然だと言われればそうなのかも知れないが、それにしても速すぎる。

もう少し(ほんの0.5秒程度で良いから)間をおいた方が自然じゃないかな、と思ったのだが調べてみたら、LINEのボットは、利用者メッセージがサーバに届いた瞬間に「既読」になってしまい、そのタイミングを開発者がコントロールすることはできないようだ(Webフックイベントがトリガーされたときに「既読」になるようだ)。アプリ開発の立場から言うと、ここは「既読」がつくまでの時間をプログラム制御したいところだ。

最近は、音声のAIスピーカーが大流行なので、これからは音声によるAIとの会話もどんどん増えていくだろう。チャットボット、AIスピーカーいずれにせよ、AIとの対話での「間(ま)の取り方」というのは、結構利用者の印象に大きく影響するんじゃないかと思っている。

T. Kamba (神場知成)

人間・機械融合系コミュニケーションシステムのデザインに興味を持つ。コンピュータ・サイエンス分野で、メーカー系研究所の研究員を経て、現在は東洋大学 情報連携学部 教授。専門はユーザ・エクスペリエンス・デザインなど。 趣味は音楽全般。特に自分でも演奏するピアノを中心にジャズ、クラシック。ジャズはミシェル・ペトルチアーニ、ビル・エヴァンス等。クラシックはバッハ、フィリップ・グラス、ブラームス、グレン・グールドなど。

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